コラム

2023/07/26 コラム

「懲戒解雇」=離職票も「重責解雇」?

 従業員を懲戒解雇した場合、ハローワークに提出する離職票には、当然に「自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇(重責解雇)」にチェックすればよいのでしょうか?

 ハローワークの業務取扱要領には、「自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇(重責解雇)」として給付制限を行う場合の認定基準があります。
 そこには、次のような基準が書いてあります(業務取扱要領52202(2))。

イ 刑法各本条の規定に違反し、又は職務に関連する法令に違反して処罰を受けたことによって解雇された場合
ロ 故意又は重過失により事業所の設備または器具を破壊したことによって解雇された場合
ハ 故意又は重過失によって事業所の信用を失墜せしめ、又は損害を与えたことによって解雇された場合
ニ 労働協約又は労働基準法(船員については、船員法)に基づく就業規則に違反したことによって解雇された場合(解雇予告除外認定を受けた場合)
(イ)極めて軽微なものを除き、事業所内において窃盗、横領、傷害等刑事犯に該当する行為があった場合
(ロ)賭博、風紀紊乱等により職場規律を乱し、他の労働者に悪影響を及ぼす行為があった場合
(ハ)長期間正当な理由なく無断欠勤し、出勤の督促に応じない場合
(ニ)出勤不良又は出欠常ならず、数回の注意を受けたが改めない場合
ホ 事業所の機密を漏らしたことによって解雇された場合
へ 事業所の名をかたり、利益を得又は得ようとしたことによって解雇された場合
ト 他人の名を詐称し、又は虚偽の陳述をして就職をしたために解雇された場合


 どうでしょうか?
 前回のコラムの監督署の除外認定の事由と比べると、離職票上「重責解雇」として認められる範囲は広そうです。
 では、前回のコラムと同じように「1週間の無断欠勤」を考えてみると、上記の基準のいずれにも当てはまらないようですね。「1週間の無断欠勤」では、「重責解雇」での離職票発行は認められないでしょう。
 次に、「ドライバーが物損事故を数回繰り返したので懲戒解雇した」というケースではどうでしょうか。
 物損事故に「故意または重過失」が認められるかどうかがポイントになるでしょう。物損事故が軽過失の場合には、「重責解雇」での離職票発行は認められないでしょう。
 実務では、ハローワークの適用窓口で、重責解雇理由について確認されることになると思います。その時、上記事由にあたらない場合は、「重責解雇」事由での離職票発行は認められないことになるでしょう。

 懲戒解雇だからといって、離職票も当然に「重責解雇」になるとは限りません。
この点は、気にしておくと良いかもしれませんね。

 

(遠藤浩紀)

© 塩味法律事務所