コラム

2023/11/04 コラム

ハローワークの失業給付の仮給付制度について

 私は、弁護士になる前は、労働局職員でした。
 ハローワークの現場で、給付業務にも携わったこともあります。
 そんな中から、今回はハローワークの失業給付の「仮給付」制度についてお話ししようと思います。

 解雇理由が無いにもかかわらず、会社側から一方的に解雇された場合、労働者は、解雇無効を争い、雇用関係が継続していることを前提にその時点までの給料の支払いを請求するのが通常です。
 しかし、当人にとって、まず対処しなければならない問題は、どのようにして直近の収入を確保するかという点です。
このときに利用すべき手段の一つが、ハローワークの失業給付の「仮給付」制度ということになります。
 このようなケースでは、会社から、離職理由が「解雇」の離職票が交付されることが多いと思います。この離職票を利用して、失業給付を「仮」に受給するのです。

 ここで、次のような疑問が生じます
 「解雇を争っているのに、解雇と書いてある離職票をハローワークに提出して、失業給付を受給してよいのだろうか?」
 たしかに、解雇を争っているのに「失業」給付を受給するのは変に感じるかもしれません。
 しかし、民事訴訟や労働審判で解雇を争っている場合、解雇が有効か無効かは裁判が終わるまで分かりません。その間、ずっと雇用保険を受給できないということになると労働者の生活が成り立たなくなります。
 そこで、失業給付の実務では、現実に民事訴訟や労働審判などで解雇を争っている場合には、失業給付の受給資格を仮に決定するという「仮給付」の取扱いをしています。

 必要書類は、通常の失業給付の受給に必要な離職票等と、実際に訴訟や裁判をしている証拠です。具体的には、裁判所の受付印のある訴状の写しや、労働審判手続申立書の写しなどです。
 多くのハローワークでは、給付部門の課長さんが手続きを担当してくれます。
 注意点もあります。
 この失業給付の仮給付はあくまでも「仮」の給付なので、解雇が無効となって復職した場合には、既に支給された金額を返還する必要があることです。
 また、そもそも失業給付の受給資格を満たしていなければ、仮給付も認められません。
 このように、雇用保険の仮給付には注意点もあるので実際に活用する際には弁護士やハローワークに事前相談しておくことをおすすめします。

 

(遠藤浩紀)

 

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