2023/05/26 コラム
「おしどり夫婦」より「カラス夫婦」で!
松原始さんという方が書いた「カラスの教科書」という本を以前読んで、大変おもしろかったのです。カラスは生まれてから3年位しないと繁殖できるほど成熟しないそうで、巣立ちはしたけれどもまだ繁殖年齢ではない若カラスは、群れて生活するのだとか。カラスの好物は何と言ってもマヨネーズやポテト!柔らかくて油脂の多いものが大好きなのだそうで、これだけでも、人間の若者ヤンキー小僧がポテトにマヨネーズをつけてぱくつきながら群れている様子を連想するではないですか。カラスはひとたびカップルになると、基本的にはずっと夫婦でいるそうで、繁殖の時だけちょっと一緒にいて、ヒナを育てるのは雌だけ、というおしどりより、よほど夫婦仲がいいとか。松原さんは「『夫婦仲がよい』鳥の例えは、おしどりよりもカラスであるべき。でもカラスでは、晴れ着の絵柄にならないんでしょうねえ」という趣旨のことも書いていました。こういうカラスの話が、コミカルに、楽しいイラスト付で書かれていて、この本を読むと、カラスが好きになること請け合いです。
私もこの本にすっかり感化され、毎日の生活の中でカラスを見かけると、しみじみ観察するようになりました。何しろどこにでもいて、見つけやすいので、生活の楽しみが増えます。少し前の朝、出勤しようとしていると、電柱の変電機の上に何やら茶色い板状のものを加えたカラスを発見。こやつは、いつもこの辺を飛び回っている夫婦カラスの片割れだな(雄雌が見分けられるほどの通ではないです)。変電機の上で、その茶色い板をつついている様子を見ると、どうやらそれはおせんべいのよう。固いので、一生懸命つついています。すると案の定、もう1羽カラスがやって来て、一緒につつき始めました。追い払わない様子から行っても、いつもの夫婦カラスに間違いないようです。少しの間2羽でつついていましたが、ふと、1羽がせんべいをくわえて、近くの家の屋根に移動し、もう1羽がついていきました。せんべいをくわえたカラスは、そのせんべいを雨どいの、雨水が溜まるところにポチャンと入れて、少しつつき回して柔らかくふやかして、もう1羽とせんべいを分けて食べ始めました。固いままでは、どうにも歯が立たない、いや、くちばしが立たなかったのでしょう。うーん、賢いぞ、カラス夫婦。仲良く、ふやけたおせんべいを分け合う夫婦カラスを見て、この日をほっこりした気分でスタートした私でした。夫婦カラスは、繁殖期には凶暴化するようですが、この2羽はそういう雰囲気はないので、もう繁殖しない老カラス夫婦なのかもしれません。いつまでも二羽で仲良くしてほしいものです。
ほっこり話の最後に一言。そうはいっても、松原さん曰く、カラスも離婚するそうです。ついでに再婚もするそうです。おお!
(上野奈央子)