離婚と財産分与について
都内の会社に勤務していた私の息子は結婚し、息子の妻は結婚を機に勤めをやめました。結婚の直前、息子が自分の家を持ちたいというので、購入代金の半分ずつを私と息子の預金から出し合い、持ち分二分の一ずつで登記しました。
新しい家に住み始めて四年後、二人目の子供も生まれたころ、息子は大阪への転勤を命ぜられ、単身赴任しました。息子は単身赴任先では、給料は自分の必要分だけを取り、残りは全て息子の妻に送金していました。
ところが、単身赴任後一年ぐらいして、息子の妻は子供を保育所に預け、パートに出るようになりました。そして、息子の妻がパートに出るようになってから、息子夫婦の関係がおかしくなりました。息子がたまに帰宅しても、息子の妻は全く何もしないというのです。息子がそのことを非難すると、突然息子の妻は「別れましょう。私が子供を育てるから、この家を下さい。そのかわり養育費は請求しません。」と言い出したというのです。
息子にとっては晴天の霹靂であり、思い悩んでいましたが、息子の妻の決意が固いので、離婚もやむなしと考えています。息子は、子供は自分が引き取って育てたいと考えており、また、財産といっても、家は結婚前に息子と私とで半分ずつ出し合って買ったものですから、家を息子の妻に渡すつもりはありません。息子が子供の親権を取ったときは、息子の勤務中は、私たち夫婦が子供の面倒をみるつもりです。息子の主張は認められるでしょうか。
一 息子さんにとってはつらいことと存じます。あなたにとっても残念なこととお察しします。
二 まず、離婚については、息子さんもやむを得ないと考えているようですので、離婚の合意はあると考えられます。
次に、慰謝料についてですが、息子さんが慰謝料を要求した場合、息子の妻に不貞行為などの婚姻破綻の原因があることを証明できる証拠がなければ、慰謝料が容認されるのは難しいでしょう。
三 子供の親権を息子さんがとれるかどうかですが、従前の監護状況や子供が乳幼児であることなどから難しいでしょう。どちらが親権者になるべきか争いになったとき、家庭裁判所は親権者の決定は子供(あなたにとっては孫)の成育にとってどちらの親がよいかということを第一に考慮して決定しますので、子供が幼いときには、母親に親権者としての不適格な事由がない限り、母親が親権者と指定されています。
四 逆に、息子さんは子供の養育費を支払わなくてはなりません。その代わり、息子さんは月に一~二回程度、子供と会って過ごすことができる面接交渉権を有していますので、面接交渉の取り決めをきちんとして、子供の成長を見守るのが良いでしょう。
五 息子の妻は、「財産分与として家をくれ。その代わり養育費はいらない。」と要求しているようですが、家の取得にあたっては、息子さんの結婚前からの預金とあなたの預金で購入したとのことですから、息子さんの持分は、息子さんの特有財産であり、本件の離婚に際し、財産分与の対象とはなりえないと考えられます。なぜなら、離婚に伴う財産分与とは、夫婦が婚姻中に作り上げた夫婦共同財産の清算だからです。
六 尚、婚姻中に息子さんの夫婦が協力して出来た預金や家財・家具等がある場合には、その総額を金銭評価し、息子さんの妻の寄与割合に応じて妻に分与すべきです。分与の割合ですが、裁判例では、専業主婦の場合は四割から三割、共働きの夫婦の場合は二分の一が多いとされています。
七 いずれの事件についても、息子さん夫婦が協議して決めることになりますが、もし協議が調わない場合は、家庭裁判所に離婚の調停を申し立て、調停でも合意ができなければ、離婚の訴訟を提起します。裁判所は、離婚判決の中で財産分与の方法についても諸々の事情を斟酌して決めることになります。
弁護士 塩味達次郎