長期間別居していた妻からの離婚請求

一 私は妻と結婚して今年まで一五年目になります。しかし結婚八年目に、妻は突然別居を宣言し子供(当時七才と五才)を連れて新しい住居を探して転居してしまい、私がこの転居先に行っても入れてもらえず、子供にも会えませんでした。

二 私は結婚以来、一家の主として、まずは収入を確保し生活を安定させることが大切だと考え、仕事に打ち込み、朝早くから夜遅くまで働きづめに働きました。その結果、給料も上がり、結婚後相続により父から受け継いだ不動産の収入も増えましたが、給料や不動産収入の管理は全て妻に任せっぱなしにしていました。

三 その後妻はなんと私に対し離婚要求してきました。私が離婚を拒否したところ、妻は離婚調停を申し立て、これが不成立になると離婚訴訟を起こしてきました。これに対しても私は断固拒否したところ、私の主張は全面的に認められ、裁判で妻からの離婚請求は認められませんでした。しかし、別居状態はそのまま続きました。

四 妻は働くこともせず、別居時に、それまでに私が稼いだ収入全てを持ち去り、私の金を使って別居以来今日まで七年間子供と三人で生活しています。
私は、子供にだけは会いたいと思い、努力しましたが、いつの間にか子供も私を避けるようになりました。私は子供との面接交渉権があるので、家庭裁判所に申立てしましたが、妻の反対や子供の意思を問いただした結果、子供の福祉の観点から現在は認められないと言われて実現していません。

五 別居以来七年が経過し、子供は一四歳・一二歳になりました。
最近、妻は再び離婚申立てをしてきました。私は今でも子供の成長を楽しみにしており、別れる意思はありません。私の考えは認められるでしょうか。
 また、仮に離婚することになった場合、私は子の親権を取って子供と生活したいと考えています。この要求は認められるでしょうか。

一 結婚した夫婦が意思が合わず別居することになって日時が経過したとしても、それだけでは離婚にはなりません。離婚に至る為には、法定の離婚要件として、①配偶者の不貞②悪意の遺棄③三年以上の生死不明④強度の精神病にかかり回復の見込みがないときの外、婚姻を継続しがたい重大な事由があるときということが定められています(民法770条)。
上記の①②③④は内容がはっきりしていますが、婚姻を継続しがたい事情というのはよく判りません。そもそも何が重大な事由かは人によってまちまちでもあり、事案によっても異なり一概には言えません。

二 かつては有責配偶者(婚姻生活の破綻に責任がある者)からの離婚請求については、別居期間の有無に拘わらず全く認められませんでした。しかし、その後判例は、配偶者の有責性の有無よりも、一定の長期間の別居という事実を重視して、離婚事由の有無の判断を徐々に変えてきています。
初めは、離婚したとしても妻の生活が確保されていて、子供が成長して精神的な点からみても不安がなく、二〇年以上の別居の事案について離婚請求を認めたのです。
その後の判例は、有責性の有無・大小より、別居という事実から実質的に結婚生活が破綻して長期化している夫婦には、無理して形式的な婚姻を継続させることはないとの考えに変わってきたのです。
そこで、配偶者の意思に関係なく、離婚に要する別居期間を徐々に短縮してきて、現在では概ね八年間程度を経過すれば、離婚を認める判例がされることが一般的な傾向となっています。

三 従って、ご相談の様なケースでは、貴方がいかに反対しても裁判で一年間争っているうちに、別居後八年が経過した事案となると離婚は認められやすいと思われます。その際、子の親権は今日まで共に生活してきた事実を重んじて、妻に認定される可能性が大きいと思われます。

弁護士 塩味達次郎