遺言書の書き方3
私の資産は、殆どが固定資産であり、現金・有価証券類・骨董品等の資産はありませんが、70歳になったので、万一の相続が争続にならない為に、遺言書を書きたいと思っているが、どんな点に注意したら良いでしょうか。相統人は、農業後継人の長男と嫁、外へ独立した子供4人かおります。
一 将来の相続発生時に、相続人間で紛争が起こらないようにするため遺言を書いておくのは良い方法です。しかし、折角、遺言書を作っておいても、将来。「老人性痴呆のため、正常な判斷能力はなかった」として遺言の効力について争いとなることがあります。そこでかかりつけの医師に「老人性痴呆は無い」旨の診断書を遺言作成の直前に貰っておくと良いでしょう。
二 次に、どのような方式の遺言をするかです。自筆証書遺言の場合、遺言者が遺言の全文・日附及び氏名を自書し、捺印しなければなりません。自筆証書遺言は、作成の要式や訂正の方法などは民法所定の方弍にのっとって行わなければ無効となることがあります。 また、偽造・変造のおそれもあり、更に折角作っておいても発見されなかったり、隠匿されたりする恐れもあります。
三 公正証書遺言は、公証人が遺言者の意思能力や、本人の真意をチェックしますので、「遺言が無効」という紛争は起こりにくいメリットがあります。
四 内容についての注意点
相続について民法は均分相続を規定していますが、遺言者の意思としては農業後継人の長男と嫁に対し、生活基盤としての住居の土地・建物と農地を全て相続さ廿たいと考えるのが普通でしょう。このように、法定相続分とは異なる相続をさせたいときは、遺言で相続分を指定することができます。しかし、その場合は、他の相続人が不公平にならないようにする必要があります。つまり上記のような遺言は他の相続人の遺留分を侵害する可能性があるからです。
遺留分とは、遺言によっても奪うことのできない相続分です。あなたの場合は、相続人は実子と養子(長男の嫁と養子縁組していると仮定)ですから、相続人各人は被相続人の財産の一二分の一の遺留分を持っています。即ち、仮にあなたの遺言によって、遺留分を侵害された相続人は、遺留分減殺請求権を行使することが出来ます。
五 そこで、将來の紛争を予防するためには以下の方法をとると良いでしょう。
1、独立した四人の子各人の遺留分を侵害しないようにする。
イ、外に独立している子供達各人には遺留分に見合う生前贈与をして、家庭裁判所に対し遺留分の放棄をしておいてもらう。
口、又は遺留分に見合う特定の不勵産を、外に独立した子供四人に各々に相続させる旨の遺言をする。
2、更に、資産が居住用上地建物以外は全て農地であって、細分化できないときは、長男に対し他の相続人に、相続分の代わりに代償金の長期分割払いをさせる旨の遺言をしておく。
六 遺言の対象の財産はできるだけもれのないように明確に表示することが必要です。土地と建物については名寄帳を取り、右の名寄帳に基づいて全ての土地建物についての登記簿謄本を取り、登記の表示の通り遺言しておくと相続による登記の時に便利です。
七 最後に、農業後継人である長男に農地を相続させるのは、中学又は高校卒業後、長男が家業である農業を無償で何十年も手伝って来たことにより、農地を維持することが出来たという事情があれば、そのことに報いるために、このような遺言をしたので、他の子供達もその意味を理解して欲しい旨の文章を入れておけば他の子供達の納得も得られやすく、紛争を予防する効果があります。
弁護士 塩味達次郎