賃貸マンションの契約更新と保証料・更新料の支払義務

一 私は、賃貸用ビルを所有しています。このビルの一階は貨店舗としで三店に賃貸し、二階から九階までは賃貸マンションとしたビルです。この度一階店舗一軒と三階の一部屋の賃貸借契約が更新時期を迎えることになりました。店舗部分については、当初の契約では一定額の保証金を入れでもらい、これを毎年五パーセントずつ償却して、契約期間三年毎の更新時には、償却分を更新時に追加して差し入れでいただくことになっています。住居部分についでは、契約期間二年毎の更新時には更新料一ケ月分を支払っでいただくことになっています。

二 更新にあたって、管理会社から店舗の賃借人甲さんに、更新契約書の作成と保証金の追加差入れを申し入れたところ、更新は了解するが、保証料の追加差し入れはできないとの回答があったとのことです。甲さんは保証金は賃料と違って根拠のないものではないかと主張しているようです。

三 私は、このビルの建築にあたり当初から返済計画を立て保証金も支払ってもらえることを前提で長期口-ンを組んで銀行から借り入れをしてビルを建てたのです。保証金が支払われないとなるとローンの支払いも計画と違ってきます。私は、甲さんが当初契約するとき、保証金は支払う意思がないのであればそのことをはっきりいってくれれば、甲さんとの契約では保証金分を組み入れて賃料を高めにするとか、あるいは他の方に賃貸したと思います。前回の更新まで保証金を差し入れできたのに今回になって保証金の追加差し入れしないと言われ困っています。私はどうしたらよいでしようか?

四 同様に管理会社が住宅部分の賃借人乙さん、更新契約書の作成と更新料の支払いを申し入れたところ、乙さんは更新契約はするが、更新料は払わないとの返事だったそうです。上記と同じ理由で、私は更新料が受け取れないとなるとローンの返済計画が狂ってしまいます。どうしだらよいでしょうか?

一 賃貸借契約における更新時の賃料や保証金の取り扱いについて現在様々な議論が起きていることは事実です。従来何ら問題にならなかったことが、経済情勢の悪化によって、誰もがどこかで費用を節約できないかと考えるようになって世知辛くなってきたと言う事情もあると考えられます。

ニ まず保証金の追加差し入れについてですが、保証金の差し入れが、当初の契約から定まっていれば当然請求できることになります。保証金の償却について争われた裁判例では、地方裁判所のレベルでその有効性が認められています。

三 更新料の支払いについては、その有効性が平成二三年七月十五日最高裁で示されました。この事例は①家賃月額四万五千円で、更新料一年毎十万円を受け取る約定の事件、②家賃月額三万八千円共益費二千円で、一年毎に更新料二ヶ月分を受け取る約定の事件、③家賃月額五万二千円共益費二千円で、更新料二年毎に旧家賃の二ヶ月分を受け取る約定の事件で、いずれも有効と判断されました。これらの事件はいずれも関西地方の事件ですので関東地方ではやや高めの更新料と言わざるを得ませんが、契約時賃借人が了解して合意したので特に不利益はないと判断されました。

四 以上、ご説明のとおり、いずれも貴方の要求は裁判所でも認められているものです。粘り強く請求していくべきでしょう。どうしても話し合いがつかないときは、裁判所で結論を得ることになります。

弁護士 塩味達次郎