訪問販売のクーリングオフや送付け商法に対する対処法について

先日、留守番をしていると知らない男が「無料水質検査に伺いました」と家に来ました。「検査」というので「市の水道局の依頼か何か」だと思い、家にあげ、水道水をコップに入れて検査してもらうことにしました。その男が薬品をコップに入れると、水の色が変わり「今すぐ健康に害が出るわけではないが、長年飲み続けると健康の保証は出来ませんよ。当社の浄水器をお勧めします」と、しつこく浄水器を買うよう勧めてきました。私は孫の健康を考え、その場で契約書にサインをしてしまいました。夜、息子が帰ってきてからその話をすると「浄水器にしては高すぎる。騙されている」と言われました。今から解除できるでしょうか。

一 ご質問のケースは、点検商法という悪質商法の一つです。点険と称して突然やって来て、「布団にダニがいる」と言って高額な羽毛布団を勧めたり、「消防署の方から消火器の点検に来ました。消火器の期限が切れている。」と言って消火器を勧めたり、「子供さんの学力調査」、「耐震構造の無料診断」、「白アリの無料点検」などと言って契約書にサインさせる手口です。これらの訪問販売は、特定商取引に関する法律の規制対象となっています。

二 御質問のケースでは。クーリングーオフの要件①営業所以外で契約をした②法定書面交付から八日以内に③代金総額が三〇〇〇円以上④法で指定された商品・役務・権利である(※)⑤書面によって業者に通知する、を充たせばクーリングーオフができます。クーリングーオフとは、クーリングーオフ期間内に消費者が業者に対してクーリングオフの通知を書面によって発信すれば、消費者から一方的に契約を解除できる制度です。尚、業者への通知は配達証明けき内容証明郵便で発信すると後日の紛争を予防できます。そして、書面を発したときに、クーリングーオフの効力は発生し、業者は違約金や損害賠償を請求できません。

三 万一、八日を越えてしまっていた場合等クーリングーオフが出来ないケースでも、①契約時に重要事項について不実の告知があったり、②業者が退去要求に応じなかった場合であれば、消費者契約法による取り消しができます。また、業者の行為が民法上の詐欺にあたる場合や、あなたを錯誤に陥らせて契約をさせたような場合、あなたは、詐欺による取消や錯誤による無効を主張できます。

先日、知らない業者から、注文した覚えの無い物が宅配便で届けられたのですが、忙しかったので十日後に開封したところ、注文した覚えの無い「同窓会名簿」が入っており「お買い上げ戴けない場合には、一週間以内に返送してください。送り返されない場合はお買い上げ戴いたものとみなします」という手紙と請求書が入っていました。もう一週間が経ってしまっだので、代金を払わなければいけないのでしょうか。

一 ご質問のケースは、押し付け販売(ネガティブーオプション)という悪質商法の一つです。消費者が注文(売買契約の申し込み)をしていないのに、業者が一方的に商品を送りつけ(売買契約の申し込みとなります)、受け取った消費者に商品代金を支払わなければならないと勘違いさせることを狙った商法です。

二 売買契約は売主と買主の意思の合致があって初めて成立します。本件のケースで、あなたは購入の承諾もしていないのですから意思の合致が無いので売買契約は成立していません。たとえ一週間以内に返送しなかったとしても、買い取る義務はありません。従って、代金を払う義務はありません。また。業者が同窓会名簿を引取りに来ない場合、あなたの方から返送する義務も無いのです。

三 本件のケースでは、特定商取引法第五九条により。同窓会名簿を受け取った日から十四日間、またはあなたが業者に同窓会名簿の引取りを請求してから七日間、のいずれかの日数を経過した後は、販売業者は同窓会名簿の返還を請求できません。要するに、この期間が経過すれば、あなたは自由に同窓会名簿を処分できるのです。勿論、代金を支払う必要はありません。

弁護士 塩味滋子

※平成20年の特定商取引法改正により指定商品制が廃止され、原則としてすべての商品が同法による規制の対象となりました。