相続人の中に未成年者や行方不明者がいる場合の遺産分割協議について

私は最近、夫を病気で亡くしました。私と亡夫の間には息子二人と娘がいます。しかし、長男は結婚して二人の子供(私にとっては孫)ができた後、交通事故で数年前に亡くなってしまいました。次男は大学を卒業後、見聞を広めるため開発途上の世界を見てくると言って、外国に出かけたまま時々便りをくれていましたが、ここ5年余りまったく便りがなくなりました。私は常々安否を心配していますが、行方は全くわかりません。長女は結婚して幸せな生活を送っており安心しています。
ところで、夫の死亡後、相続財産の分割にあたり様々な問題がもちあがりました。なお、夫は遺言を作っていませんでした。

遺産相続手続きを進めるためには、遺産分割協議をしなければなりません。しかし長男は既に死亡していて、長男の妻とまだ幼い7歳と5歳の子供が残されています。長男の相続権はどうなるのでしょうか。また、誰が遺産分割協議をするのでしょうか。

 

一 ご不幸が重なりご心痛のことと思います。しかし、ここはあなたの頑張りがなんとしても必要です。心残りのまま亡くなったご主人のためにも相続手続きをきっちり終えて安心な生活に一日も早く戻られることをお祈りします。

二 ご主人が死亡したとき、ご長男は既に亡くなっているのですから、のご長男の相続分はご長男の子(被相続人の孫)二人が受け継ぐこととなります。これを代襲相続といいます。ご長男の妻には相続権がありません。また、孫二人とも未成年者ですので、母親である長男の妻が法定代理人親権者として、遺産分割協議をすることになりますが、7歳の孫と5歳の孫とが利益相反しますので、片方の孫のために家庭裁判所に特別代理人選任の申し立てをして、特別代理人を選任してもらわなければなりません。この場合、特別代理人候補者には、あなたの兄弟姉妹になってもらうこともできます。遺産分割協議は、長男の代襲相続人の法定代理人としての長男の妻と、家庭裁判所から選任された特別代理人とが協議にあたることになります。

次男はここ何年も行方知れずで、連絡のつけようがありません。次男の相続分を除いて、遺産分割ができるのでしょうか。

 

一 遺産分割協議は、相続人全員でしなければなりませんから、次男の法定相続分を除いて相続手続きを進めることはできません。このような場合は、次男について家庭裁判所に不在者財産管理人の選任申立をして、裁判所から選任された管理人と遺産分割の手続きを進めるしか方法がありません。管理人には不在者の叔父や叔母など親戚の人になってもらえばいいのではないでしょうか。但し、次男と叔父・叔母とに利害関係がある場合には、家庭裁判所は弁護士を選任することもあります。

二 以上から、遺産分割協議はあなたと、孫の法定代理人親権者母である長男の嫁、孫の特別代理人、次男の不在者財産管理人、長女、の五人で行う必要があります。

弁護士 塩味達次郎