期限の定めのない借地契約の更新拒絶

一 私は父から相続した土地30坪を甲さんに賃貸しでいます。この土地は、昭和41年3月末日に私の父が甲さんの父親乙さんに賃貸したものです。私の父と乙さんとは友人たったことから、乙さんが住宅を持ちたいが土地がないということで、父は所有していた土地の一部分を区切って、道路に面したこの土地を貸したのです。乙さんはその土地上に木造住宅を建てて住んでいましたが、乙さん亡き後は息子の甲さんが住んでいます。

二 父と乙さんとの契約内容は。友人関係からか細かい取り決めはなく、土地の場所、面積、一ヶ月あたりの賃料ぐらいしか決められておりません。契約後も父と乙さんとの関係は円満であり、私が父から土地を相続した後も、借地権は乙さんから甲さんに引き継がれましたが、いずれも円満に推移してきました。賃料はその時どきの社会惴勢にあわせ決めており、賃料の滞納もなく今日に至っています。ただし建物は建築後45年近く経過しているので、相当痛んでいるようにみえます。

三 現在この土地周辺は、父が賃貸した当時と逞っで周辺にはファミリーレストランや郊外型の大型店舗が進出しており、有力な商業地域になりつつあります。私は甲さんに貸している土地を含めて、私が所有する周辺の土地を使っで大型の商業施設を作って新たな事業をしたいと考えています。

四 私は、甲さんに貸している土地を自分が事業をするのに必要な土地となったので、甲さんに対し次回の契約更新時には、明け渡してもらいたいと考えていますが、出来るでしょうか?

一 まず契約更新の時期について考えてみます。45年前に契約が締結されているとすると、旧法の借地法の適用となり、木造で期間の定めのない借地契約ですので、契約期間は30年となります。平成8年3月末日に、特に地主から異議を述べていないので契約は法定更新されたことになります。更新後の期間は20年とされますから。契約期間の満了は平成28年3月末日となります。

二 それではあなたの場合、契約期間満了時に地主に自己使用の必要性やその他の正当事由があるとして、借地人に対し更新を拒絶して契約を解除できるか、を考えてみます。本件では旧借地法の適用のある借地契約ですので、更新拒絶の正当事由を具備しなければ、更新を拒絶することは認められません。では更新拒絶の正当事由とは何かですが、裁判では主に以下の事項が比較考量されております。

①地主・借地人のどちらに土地利用の必要性があるか
②賃貸借契約締結に至ったいきさつ
③賃借人に地主との信頼関係を破滅するような行為があったかどうか
④土地・建物の利用状況や建物の朽廃の有無程度

三 本件の場合、あなたは契約更新を拒絶したいのですから、平成28年3月末日の期間満了後も甲さんが土地の使用を継続している場合には。遅滞なく異議を述べておく必要があります。もし。遅滞なく異議を述べておかないと、借地契約は当然更新されてしまうからです。異議の申し出は配達証明付き内容証明郵便によって行っておくべきです。そして、話し合いを開始すべきです。そのなかで出来れば立ち退き料も含めた話し合いをしておくと良いでしょう。話し合いが決裂したときは、更新拒絶にもとづく契約解除による建物収去土地明け渡しの裁判を求めることになります。その場合には裁判所はあなたの土地の利用による利益と甲さんの土地利用の必要性を勘案した上で、判決を下すことになるでしょう

四 なお、甲さんが了承してくれれば、契約期間満了まで待つことなく話し合いをはじめ、相当額の立ち退き料を提示した上で、合意することも良いでしょう。家屋も相当年月が経過していることから、率直に話し合いの申し入れをしてみたら如阿でしょうか。

弁護士 塩味達次郎