息子の借金と過払い金の返還請求
一、私の息子は、学校卒業後サラリーマンとなり、その後結婚してからは住まいもローンで購入し、子供にも恵まれ幸せに暮らしていました。このたびその息子が、サラ金八社から借入れをしていて、総額1000万円にもなることが判りました。
二、借入れをはじめたきっかけは、八年程前に会社が不景気となり給料とボーナスが減額されたことです。冢のローンの支払いは減額されず、だんだん生活が苦しくなってしまったようです。息子は生活費が不足しがちなことは判っていましたので、妻には何も言えず、小遣い不足でもあったのでストレスの発散のためパチンコをはじめたところ、勝ってお金を増やしたり、負けて金を失ったりしているうちにすっかりパチンコにはまってしまったとのことです。
三、結局息子はパチンコをして負けると、その都度サラ金から金を借りて、遊んでいたと言うことです。そして、気が付いでみたらサラ金への毎月の支払いのために、他のサラ金から借りて返すと言うどうしようもない状態になって、はじめて私の所に相談に来ました。私は、借りた金を返すのは当然のことと思っていますが、息子と何とかうまく解決したいと悩んでいます。
四、いま、電車の中の広告や新聞のチラシ広告、更にテレビ広告でサラ金からの借金は返さなくてもよいとか、払い過ぎた利思と元金は返して貰えるというようなことが書いてあったり言われたりしています。私としては、息子のことを考えるとこのとおりになるのであればありかたいと思います。しかし、それにはどうしたらよいのかわかりません。
また、処理が終わった後、金を借りていた人は何らか法的に制限を受けることがあるのではないかと心配しています。
一、貴方の息子さんのようにサラ金からお金を借りてその時々の生活費の不足分を補充してその場をしのぎ、給料が入ったら借金を返す方法で生活している人はたくさんいます。ですから、サラ金業者が急増したといえます。しかし、サラ金からお金を借りることは、銀行や信用金庫などの金融機関からお金を借りるのと違い、金利が一段と高かったため、一度サラ金から金を借りると返済しても返済しても返しきれず、長期に亘って借金の返済に苦しむことが指摘されていました。
二、従来の金銭貸借についての民事法の考え方は。サラ金業者が借り主から金利を受け取るにあたって出資法の範囲内であれば利息制限法の定める利率を越える利息を受け取っても債務者が任意に支払うのであれば合法と認めて来ました。しかし平成十八年一月に最高裁判所は、債務者が任意に支払った場合で出資法の上限金利の範囲内であっても、利息制限法の範囲を超えた利息は違法であるとし、債務者はサラ金業者に払いすぎた利息と元金を返還詰求できるという画期的な判決を出したのです。
三、この判決を契機に、お客からサラ金業者に対して、払い過ぎ利息や元金の返還請求が活発に行われるようになりました。しかし、注意すべきぱ利息制限法の範囲内の利息は当然発生していますし合法です。ですから、サラ金からの借金している人が皆払過ぎ利息や元金の返還訓求をすることが出来るわけではありません。サラ金業者から取り寄せた取引履歴をもとに、利息制限法に従い引き直し計算して、払過ぎの利息や元金があるかどうか、調べてみないと判りません。
四、ですから、貴方の息子さんについても、サラ金業者から取引履歴を取り寄せ、利息制限法によって引き直し計算をしてみて、はじめて正確な残高が判ります。そのうえで、返還を求めることが出来るようでしたら返還を求め、出来ないようでしたらサラ金業者と分割による返済計画を協議して合意案を成立させて再スタートを出来るようにしてやるのが良いと思います。実際の手続きは、弁護士等の専門家に依頼するのが一般的です。その際には、費用報酬等も納得できるまで説明を受けておくことも肝要です。
五、いまサラ金業者に対する返還請求が怒涛のようにサラ金業者に押し寄せ、サラ金業者の経営状態は全般に悪化しています。サラ金業者のなかでも銀行の傘下に入った銀行系と銀行とは離れている独立系の二種類が存在していますが、なかでも独立系は経営危機が言われています。ですから。もし息子さんについて調査した結果返還請求できる場合には。早く返還請求しておかないとサラ金業者が倒産して返還してもらえなくなることが考えられます。
六、なお、前述の債務整理をしたからといって債務者が何らか法的制限を受けることはありません。
七、本年六月に改正貸金業法が施行され貸金業者は借り主の年収の三分の一を超える貸付を制限され、利息制限法の範囲内でしか利息を受け取れなくなりました。これからは息子さんの様な借り方は、出来なくなり家族の心配も少なくなります。
弁護士 塩味達次郎