妻からの離婚請求~倦怠期夫婦の場合
一 私は現在妻から離婚を求められています。私と妻とは結婚以来10年が経過し、子供は長女5歳と次女3歳の二人です。
二 妻はいつしかインタネットに夢中になって、昼夜を問わず時間があると家のパソコンに向かっていました。私が注意して見ると他の男性と連絡を取り合っていたのです。私はそのことに気づいてから、インターネットのやり取りを記録するソフトを取り付けて監視したところ、通信内容は読んでいると嫌になるような破廉恥なものですが、特に妻の不貞を示すものはありませんでした。
三 三カ月ほど前に私は妻にそのことを注意すると、妻は私が通信内容を盗み読みしたことを激怒したことから、夫婦喧嘩となりました。その挙げ句には妻は子供二人を連れて実家に帰ってしまいました。
私は、そのうちに気が収まれば戻ってくるだろうとタカをくくっていたところ、家庭裁判所から突然手紙が来て離婚調停の申立をしたことが分かりました。
四 私は指定された調停期日に裁判所に行ったところ、妻の私に対する要求は、①私達は離婚する、②今までの我慢を強いられてきたのだから慰謝料を支払え、③結婚以来二人で築いた財産は半分を寄こせ、④子供二人の親権者は妻とする、⑤養育費は子供二人がそれぞれ成人に達するまで支払え、というものです。
五 私はそもそも妻の言い分が全く身勝手なものとしか考えられません。離婚は勿論のこと子供と離れて暮らすことも考えられません。これでも私は離婚に応じなければならないのでしょうか。離婚にならなかったときには、私の生活と妻と子供達の生活はどうなるのでしょうか。
一 結論から申し上げますと、お尋ねの様な状況では、貴方は妻の離婚の請求を拒否することが出来ます。貴方はこれからも調停期日に出頭して自分の意志をはっきりと主張すべきです。
夫婦の一方が他方に離婚を求めて他方がこれを拒否しても離婚が認められるのは、ⅰ配偶者の不貞、ⅱ配偶者からの悪意の遺棄、ⅲ配偶者の三年以上の生死不明、ⅳ配偶者が強度の精神病にかかり回復の見込みがないとき、ⅴその他婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき、とされています。貴方の場合、このどれにもあたりません。
二 とは言っても、妻が離婚を強く求めているとき、調停が不調になると妻は離婚訴訟を提起することが考えられます。しかし、これも前記の法定の理由がなければ裁判所が離婚を認めることはありません。ただし、妻が子供二人を連れて実家に戻っている現状は変わらず、貴方は当面一人で暮らさざるを得ません。
三 法律上は夫婦には同居・協力義務がありますので、貴方は妻に子供を連れて戻り同居せよと調停や審判を通じて求めることは出来ます。
しかし、法律上これを強制することは出来ません。却って、妻から貴方に対して婚姻費用として生活費や子供の養育費を請求してくることが考えられます。貴方としては残念でしょうが、別居している妻と子供達に適正な額を負担せざるを得ません。
四 なお、現在の裁判実務においては、一にお示しした法律上の離婚事由がなくとも、別居後八年を経過すると夫婦関係は破綻したと推定され、離婚が認められる傾向にあります。ですから、貴方としては様子を見ながら対応を考えて行かざるをえません。また、この期間経過前でも貴方が考えを変えて夫婦が離婚するとなった場合、子供の親権は、子供に対する虐待など親権者としての不適格事由がない限り、子どもの福祉の観点から殆ど妻に与えられます。
弁護士 塩味達次郎