土地の生前贈与に対する遺留分減殺請求

一 最近私の父母が相次いで死亡しました。そこで、兄と姉と私で相続財産をどのように相続するか、また相続財産をどう評価するかでもめています。父が10ヶ月前に死亡し、その相続の話が片づかないうちに1ヶ月前に母が亡くなり、一度に両親の相続手続を済ませなければならなくなりました。

二、父は五年程前自分所有の土地上に兄に兄名義の家を建築させていました。そして自分達夫婦は一階に居住し、兄夫婦は二階に居住していました。両親は亡くなる前の数年間は病院通いをしていましたが、亡くなる直前まで自宅で元気に生活をしており、兄夫婦は両親の面倒をみているとは言えない状態でした。そこで私と姉は両親の所に通い、亡くなる直前まで両親の世話をしていました。しかし、両親がなくなるまで、父が兄に自宅の土地を贈与していることを知りませんでした。

三、そして、過日兄と姉と私の兄弟三人で、遺産分割の話し合いをおこなったとき、兄は自宅敷地を自分が既に贈与を受けているので、父の遺産は貯金だけだと言い、預金を三等分した金頷を提示してきました。姉と私は、法務局で調べてみると、確かに実印び印鑑証明書は父のものですが、書類はすべて兄が作成していて、父の署名部分も兄の筆跡で書かれていました。私達は、兄が父の知らぬ間に贈与の登記をしたのではないかと疑っています。なお、両親とも遺言書はありませんでした。

四、姉と私は、遣産の内容も提示された内容も納得できません。私達は、預金の外に土地について遺留分としての請求権があると考えています。そこで兄にこれを述べたところ、兄から敷地には利用権がついているので私達に殆どやるものはないといわれてしまいました。私達は、相続財産としでは、預金の外に土地について何ら権利はないのでしょうか?

一、ご両親が相次いで亡くなったとき、相続手続は両親一緒に行うことになります。まず、父親が長男に自宅敷地を贈与している点については、貴女方が、不振に感じていても、贈与の事実を覆すような証拠を提示できなければ難しいでしょう。しかし、長男は父親から土地の贈与を受けているのですから父親の相続にあたっては、亡母と姉と貴女は、土地について遣留分を有しています。

二、亡母は遺留分として亡父の遺産に対する法定相続分二分の一の半分の四分の一を、貴女と姉は遺留分して法定相続分六分の一の半分である十二分の一を有しています。そして次に母親が亡くなったことで、母親が持っていた父親の遺産に対する遺留分四分の一が更に相続されて、姉と貴女は母親の持っていた遺留分の法定相続分の三分の一即ち十二分の一を相続していることになります。結局、賁女方姉妹は、それぞれ父親の遺産について計六分の一の遺留分を有していることになります。

三、また、長男は土地上に自分名義の家があるから、土地の価格は利用権を控除すると土地についての遺留分は。姉と貴女には殆どない様なことを言っているようですが、原則的には違うと言えます。裁判例を見ても、亡父の土地上に亡父の許可を得て相続人たる子の一人が家を建築して所有していて、他の相続人が遺留分を要求している事案について、土地の評価額を更地評価としています。(東京家庭裁判所昭和六十一年三月二十四日審判)。また、税法上も更地評価です(相続税個別通達)。従って、姉と貴女は更地価格を前提として、遺留分を請求することができます。但し。個別的事案については、土地の利用者に一定程度の利用権の存在による権利を認め、紛争を解決しているのが見られます。

四、なお、兄弟で話し合いかつかないとき、遺留分を請求する権利は。「相続の開始及び減殺すべき贈与又は、遺贈があったことを知った時から一年間これを行わないときは時効によって消滅する」(民法一〇四二条)となっていますので、とりあえず配達証明付き内容証明郵便で、権利行使の意思表示の通知をしておくことをお勧めいたします。

弁護士 塩味達次郎

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