前妻の子として戸籍に記載されてしまった場合の訂正方法
私の父Aと母Bが最近相次いで亡くなり、相続の問題が起こりました。そこで、遺産分割の話し合いをするため、戸籍謄本を取ってみたところ、戸籍の私の母の欄には、私が一度も会ったこともない女性Cの名前が記載されていました。
私の兄弟は弟Dと妹Eです。私は物心ついたころから父A、母B、弟D、妹Eと私の5人で暮らしており、今回戸籍を見るまで私はもちろん、弟Dも妹Eも私が母Bの子でないとは夢にも思っておりませんでした。
伯父伯母から聞いた話によると、父Aは、母Bと結婚する前、Cと結婚していたのですが、父AとCとの間に子供は生まれないまま長期間別居し、事実上の離婚状態だったそうです。その後、父Aは母Bと暮らし始め私が生まれたので、父Aが私の出生届を出したところ、Cとは正式に離婚していなかったので、戸籍上私の母はCと記載されてしまったことが分かりました。また、父Aは私が生まれた後、Cとは正式に離婚し、その後父Aと母Bは正式に婚姻届を出したので、弟Dと妹Eは父A母Bの子として戸籍に記載されたことが分かりました。更に、戸籍上私の母と記載されているCのことを調べたところ、Cは既に死亡しておりました。
私はこの際、真実母Bの子として戸籍を正しく訂正して欲しいし、また、母Bの遺産を相続したいと思います。どうしたら私が母Bの相続人と認められるでしょうか。
一 父母の両者又は子のいずれか一方が死亡した後でも、生存する一方は検察官を相手方として死亡した一方との間の親子関係存否確認の訴えを提起できるというのが最高裁の判例です。
本件のケースでは、父A、生物学上の母B、戸籍上の母Cの全員が死亡していますので、あなたは、①Cについては、検察官を被告として、親子関係不存在確認の訴、②Bについては検察官を被告として親子関係存在確認の訴えを起こし、①②の勝訴判決により、あなたの母親がCではなくBであると戸籍を訂正すれば、母Bの遺産について相続人として認められます。
二 ご質問のケースでは、あなたは2つの確認訴訟を提起する必要があります。
そして、そのための要件として、法律上訴えの利益が必要です。即ち、訴えの利益とは、あなたの場合、戸籍上の母Cの子ではなく、生物学上の母Bの子であるという親子関係の存否を即時に確定すべき法律上の利益、または必要があることです。
三 あなたの場合、他の兄弟D・Eがあなたと母Bとの親子関係を争っていないとしても、戸籍事務の取扱では、親子関係の記載を訂正するためには、確定判決が必要というのが判例ですから、この際戸籍を訂正したいというあなたの希望を実現するための確認の利益があります。
四 また、あなたが母Bの子として判決で認められない場合、法定相続分について以下のような不利益を受けます。
①先に死亡した父Aの遺産については、母Bが二分の一、あなたとD・Eの三人は二分の一×三分の一で六分の一ずつ認められますが、②次に亡くなった母Bの遺産については、あなたは戸籍上Bの子ではないので、相続人はD・Eの二人となりD・Eが母の相続分二分の一を二分の一ずつ相続することになり、③結果として、あなたは全遺産の二四分の四、DとEは各人が二四分の一〇ずつということになり、あなたは母Bについての相続で、不利益を受けることになります。
従って、この点からも確認の利益があるといえます。
五 親子関係存否の証明方法としては、あなたは親子関係存否確認の訴えの裁判の中で、生物学的にCと親子関係になくBと親子関係にあるか否かについて鑑定を申請することができます。この場合、DNA鑑定により、科学的に親子関係の存否を証明できるのです。
あなたの場合、戸籍上の母C、生物学上の母Bの他、父Aも死亡しているため、あなたと弟Dや妹Eとの兄弟姉妹関係のDNA鑑定をして同胞であることが証明できれば、あなたは戸籍上の母Cの子ではなく、生物学上の母Bの子であることが認められます。
六 平成16年4月1日より新しい人事訴訟法が施行され、離婚・離縁・親子関係存否確認などの人事に関する訴えの第一審は家庭裁判所で審理されることになりました。そこで、あなたは前記の訴えをあなたの住所地を管轄する家庭裁判所に提起すればよいのです。
弁護士 塩味滋子