リゾートクラブの会員権を購入したが、十分なサービスを受けられなかった場合
一 私は、自宅でリゾートクラブ会員のセールスマンの訪問を受け、会員権を購入して会員になるよう勧誘され、高額の預託金を払って会員となりました。
その時、受け取ったパンフレットとセールスマンの説明によると、そのクラブには全国各地に素晴らしいリゾート施設があり、会員は自分の使いたい時に予約すれば、通常よりはるかに安い値段で使いたい日数を自分の別荘の様に使えるというのです。
私は、常日頃からあらゆる物は所有していることより、利用することの方が大事だと考えていましたので、リゾートクラブは、管理は管理運営会社がやってくれて、自分は使いたい時だけ使えるので、大変便利であり、また全国各地に施設があるので、いろいろな所に行けて飽きずにいられると思い、会員権の購入契約をしました。
二 会員となってから、施設を使おうと思って、管理運営会社に予約を入れると、どういう訳か私が行きたいと思う施設は、どれも既に予約がいっぱいで取れません。どうしてもというのであれば、数カ月先であれば取れるというのです。
仕方なく、どこでもいいから空いているところに予約をというと、いくつかあるにはあるのですが、観光地としては全く魅力のないところばかりなのです。
しかし、既に旅行のために日程は明けていたので、全然利用しないのも納得できず、予約できたところに行きました。
三 行ってみて施設に泊まって驚かされたのは、確かに写真の様な外観の施設はありましたし、低料金で宿泊もできました。しかし、パンフレットにでている様な温泉施設はなく、高級レストランもなく普通の食堂で、利用料金はまったく通常の値段でした。
四 私は、今何だか納得できません。だまされたような気がしています。契約を解除して、預託金を返還してもらいたいと思っています。そこで、契約書をよく読んでみると、施設を安定して運営するために、10年間は双方とも契約を解除できないと記載されています。また、解除がなされたとしても、預託金の返還については、解除後5年を経過した時点で、管理運営会社は会員に預託金を返還する、としてあるのです。
五 私は、このような契約の解除を認められるでしょうか。また、預託金を早期に返してもらえるでしょうか。
一 リゾート施設の利用を会員権にして販売する会社は、現在多数存在しています。しかし、会員権を売れば、その分代金が会社に入ってくるわけで、どうしても適正数以上の会員権が売られてしまいがちです。販売会社が適正数の五倍も販売をしていた実例も指摘されています。
いずれにしても施設はあるわけです。ただ、施設の規模に対して会員数が多いため、予約が殺到して大変使いづらい、事実上使えないということです。また、設備にしても全国のリゾート施設の中から、素晴らしいと見られるものを掲載しているわけで、すべての施設に備えられていると記載していないのですから、この点も言い抜けられてしまいます。
二 ところで、事実上使えないということが初めから判っていれば、会員権を購入しなかったとしても、セールスマンの言葉を鵜呑みにして、特に自分で確認をせず貴方は契約を締結してしまったと言えます。
こうなると契約の効力が争われることになります。パンフレットと契約書の条項、更に契約締結時の状況をもととして、その効力が判断されることになります。
三 結局、契約締結時の状況によって判断が分かれるため、簡単には結論がでないこととなります。
ところで、従来このような契約には、中途解約権がみとめられていませんでした。しかし、最近では消費者保護の観点から、契約締結前あるいは契約締結時点で、消費者である貴方が認識していたものと実際に提供されるサービスの内容や性質に齟齬が生じた場合には、事業者である管理運営会社に対して、消費者である購入者から一定の損害賠償請求を認めた上で、契約解除も認める方向になってきています。
四 貴方の場合も、事実上使えないとはどの程度なのかの判断により、結論は異なるといえます。また、契約解除が認められるとすれば、預託金の返還時期は当然解除後、速やかにということになるでしょう。
結果予測の判断は、難しい点がありますので、専門家の判断を受けたん後で、結果を出すのがよいと考えられます。
弁護士 塩味 達次郎