ペット飼育可の条件で貸した賃貸住宅の明け渡し請求
ー 私は、五年前から三軒がつなかった庭付きの住宅を賃貸しています。私の貸家はやや交通の便が良くないので、賃借条件を賃借人に気に入られる様に庭付きにしたのです。また私は犬や猫が好きなので、賃借人が犬や猫を飼うことも賃貸条件としで了解していました。
二 借家を探している人のなかには、庭が付いていることや犬猫を飼えることを希望している人もいて、この物件は好条件だと言って、空き室が出るとすぐに次の入居者が決まる状態でした。不動産業者の話によると、現在景気が悪化していることや貸家が増えできていることから、空き室が出ても入居者がなかなか決まらないとか、家賃を下げざるを得ないという状況のようです。私は庭付きの住宅にして良かったなと思っていました。
三 今日までの入居者はそれぞれ家の内外で犬を飼ったり、猫を飼ったり、庭に花を植えたり、家庭用菜園として利用したりしていました。
四 ところで、本年四月に入居した一軒の賃借人甲さんは犬と猫が大好きと言っでいましたが、入居すると同時に犬と猫を飼い始め、その数が段々増えてきました。犬は庭に10匹位、家の中に猫は8匹位飼っています。はっきりしませんが、どうやらこの借家の中でブリーダーのようなこともやっているようなのです。
五 現在隣家の住人から、甲さんの家の犬がいつも吠えていてうるさくでたまらないとか、犬や猫の屎尿のにおいが強く耐え難いので何とかしてくれと言う要求が出で来ました。
六 私は甲さんに、そもそも犬猫を飼っでもいいという条件で家を貸してしまったので、どうしたらよいか困っています。甲さんにこの貸家から何とか出て行ってもらいたいと考えこいますが、可能でしょうか。
一 賃貸借の条件に、犬猫を飼っても良いという条件の借家は殆どありません。現在、一般に人は、犬や猫を好きだと考える人を除いて、清潔を第一に考え、犬や猫を飼うと部屋が汚れたりするとか、不潔だと考えたり、鳴き声や臭い、さらには屎尿の臭いを嫌うからです。ですから、犬猫を飼えるというのは。犬猫の好きな人にとっては数少ない条件の借家だと考えられます。
二 しかし、甲さんのように犬や猫を多数飼うことは、常識的に考えられません。貴方としても甲さんのように多数の犬や猫を飼育するとは予想していなかったと思います。
三 そこで、貴方は甲さんに、犬や猫の飼育を認めていたが、甲さんの様な飼育は考えていなかったこと、近隣の住人からの苦情や通常予想される住居の生活環境の保持のために。犬や猫の数をそれぞれ一から二匹に減らすことを要求するべきでしょう。
四 甲さんが、貴方の要求を無視して現在の数の犬や猫を飼い続け、その結果犬の吠える声や犬猫の屎尿の臭いが近隣住民の受忍限度を超える程度になった場合には、賃貸人と賃借人の信頼関係を陂壊したとして、賃貸借契約を解除し明け渡しを求めるという法的手続きをとることになります。
五 そこで貴方としては、まず簡易裁判所の借地借家調停という場で話し合いの機会を持ち公平な調停委員の判断を受けるのが良いかと思います、調停が成立せず不調となったときは、やはり訴訟を起こして明け渡しを求めることになります。
六 調停の場でも訴訟の場でも貴方が、賃貸借条件として犬や猫を飼うことを認めていることが、甲さんの様に犬や猫を多数飼うことまで認めていたと考えられるかどうかが争点となります。一般的には、甲さんの様に多数の犬猫を飼うことは予想できないと言えるのではないかと考えられます。他方、反対の意見としては、甲さんからすれば逆の考えだ、即ち飼うことを認めているのだから犬猫の数は少数でも多数でも変わらないと言う主張になるのでしょう。
七 私は住居の利用方法からすれば、甲さんの様な利用方法は賃貸借契約の利用方法の違反があり、信頼関係を破壊していると考えます。しかし、この問題の妥当な解決点は、結局貴方が甲さんに引っ越し費用を負担して引っ越してもらうことになるのではないかと思います。しかし、断定的に結論を出すことは出来ません。どうしても双方が主張を曲げない限り裁判所の判断を仰ぐことになると思います。
弁護士 塩味達次郎