ゴルフ会員権の預託金について返還時期の据え置きや抽選償還の決議がなされた場合
私はゴルフが大好きで、16年程前に、あるゴルフクラブの会員権を購入しました。d 会員になるには、初めに会員資格保証金(数百万円)をゴルフ場経家会社に預け入れ、10年後に返還をしてもらえることになっています。その上で、会員は安い利用料でプレーを楽しめるのです。バブルの頃には、ゴルフ場も大賑わいでした。
また、会員権の値段も急騰し、私の会員権も時価一千万円と言われていました。
ところが、6,7年前ゴルフ場の経営会社から、「①入会当時の預託金の返還時期が迫ってきたが、最近プレーをする人が急減したため、経営が悪化してきている、②預託金の据え置き期間の満了する会員の急増のため、一時に多数の会員に対し、保証金の返還に応ずることは困難である。そこで、ゴルフ場の運営理事会は「据え置き期間の10年延長」を決議した。③また、「この延長決議に同意した会員で、抽選償還を希望する会員の中から毎年抽選を行い、当選した会員に限り、預託金を返還することを内容とする抽選償還制度の導入を決議した。ついては、全会員にこの制度に同意するよう求める。」として、「抽選償還の申込書」を送付してきました。
私はこれに応じないと、預託金の返還が受けられなくなるのではないかと不安になり、抽選償還申込書に署名捺印して返送しました。
この会社はその後、毎年抽選償還により50口ずつ返還しています。私は償還申し込み後6年経過しましたが、未だに返還を受けられません。訴訟を起こせば返還を受けられるでしょうか。
一 ゴルフ場に当初預託した預託金の据え置き期間が満了したとき、本来は当然その返還を受けられることになります。
ところで、ゴルフ場運営会社の理事会が、一時期に償還が集中することによる資金繰りの悪化や利用者の大幅減を理由に、抽選償還制度の導入を決議することは、バブル崩壊後一部のゴルフ場では行われているところです。その際、会員としては抽選償還の申し込みをしなければ、全く償還の対象から外されてしまうのではないかとの不安から、この申込要請に応じてしまいがちです。しかし、一度応じてしまうと、抽選に当たるまで償還は受けられません。
二 平成18年4月27日東京地裁は、単に理事会が保証金の据え置き期間の延長決議と抽選償還を決議しただけではなく、会員に個別に同意を得ているときには、理事会の決議は有効で、会員は抽選が当たるまで償還を受けられなくてもやむを得ないと判断しました。そして、他方預託金の返還を訴訟などで請求すれば受けられたかもしれないと結論しています。
疑問とされるのは、①運営理事会の預託金返還の据え置き決議は、一般会員を拘束する効力がどこまであるのか、②現在の事態は、問題となっているゴルフ場の会則に規定されている「経営状態の変動その他不可抗力の事態にある時には会員の権利を一時的に制限できる。」に該当していると言えるのか。そのため延長決議が有効と言えるのか、③会員の個別的同意は、真に同意していたと言えるのか、かえって本心は早期に返還を求めていたのではないか、等です。
三 ところで、ゴルフ場経営会社はバブル崩壊後経営の悪化が表面化し、さらに2001年から2002年に預託金の返還期限が一斉に到来したため、バブル期にやや乱立気味に設立されたゴルフ場は経営困難に陥り、倒産に至ったゴルフ場もあります。ですから、あなたの場合も抽選償還に同意せず、仮に訴訟を起こし勝訴判決を得たとしても、現実にお金を手にすることは難しいかもしれません。
弁護士 塩味達次郎