【改正相続法】自筆証書遺言書の保管申請
今回の相続法改正で、自筆証書遺言を法務局で保管してもらえる制度ができたと聞きました。具体的な保管の申請はどのようにしたらよいでしょうか?
従来の自筆証書遺言の問題点
自筆証書遺言とは、遺言者が、全文・日付及び氏名を自署し、これに押印をして作成する遺言書のことを言います。公正証書遺言書のように、わざわざ公証人役場に出向かなくても手軽に遺言書を作成できることや、遺言書の内容を秘密にできることから、この自筆証書遺言書を利用するケースはこれまでも少なくありませんでした。他方、自筆証書遺言書は、公証人や弁護士等の法律の専門家が関与せずに作成されてしまうことが多いため、後日その内容をめぐって共同相続人間で争いが生じやすいこと、自筆証書遺言書は、原則として本人が保管するものであることから、災害や紙の劣化による滅失、紛失等の危険がありました。また、相続人の一部の者による遺言書の改ざんや隠匿・破棄の恐れもあります。そこで、今回の相続法改正に伴い、新たに「法務局における遺言書の保管等に関する法律」(以下単に「法」と言います)が制定され、自筆証書遺言書を「遺言書保管場所」(法務局)に保管してもらえる制度が新設されました。この遺言書保管制度を利用すると、自筆証書遺言書を保管してもらうことにより遺言書の紛失や偽造・隠匿等を防げるだけではなく、遺言者が死亡した後に相続人が遺言書の有無を検索してもらうことができます。また、これまで自筆証書遺言書の場合、遺言者が死亡すると家庭裁判所に遺言書の検認手続きをする必要がありましたが、今回の自筆証書遺言の保管制度を利用すれが、この家庭裁判所による検認手続きが不要になります。
自筆証書遺言書の保管申請先
この自筆証書遺言書の保管申請をするのは、以下のうちのいずれかを管轄する遺言保管場所(法務局)になります(法4条3項)。
- 遺言者の住所地
- 遺言者の本籍地
- 遺言者が所有する不動産の所在地
但し、遺言者が以前に自筆証書遺言書の保管申請をしている場合は、先の自筆証書遺言が保管されている遺言保管場所に申請することもできます。
自筆証書遺言の保管申請の方法
遺言書の保管申請をするためには、遺言者自らが遺言書保管場所に出頭する必要があります(法4条6項)。これは、遺言書保管官が、確かにその遺言書が遺言者本人が作成したものであることを確認する必要があるからです。そして、その申請のためには、ホチキス止めをしていない自筆証書遺言書本体の他、申請書と添付書類(本籍の記載のある住民票や免許証・マイナンバーカード等の身分証明書等)、手数料を添付する必要があります。保管申請が受け付けられると、遺言者の氏名・生年月日・保管番号が記載された保管証が交付されます。
自筆証書遺言書の保管申請に関する注意点
なお、自筆証書遺言書の保管申請の際に、遺言書保管官による審査が行われますが、これはあくまで遺言書の形式的な審査に過ぎず、遺言書の有効・無効を審査するものではありません。従って、簡単な内容のものであればともかく、ある程度複雑なものについては、予め弁護士等の法律の専門家に遺言書の内容等についてご相談されることをお勧めします。